京都府立医科大学 眼科学教室

助教 米田 一仁 先生 研究

網膜

米田 一仁の主たる研究成果と抱負

網膜硝子体を中心に臨床と研究に取り組んでおります。
網膜は眼球の奥にある非常に繊細な組織で、角膜や水晶体を通過した光が最終的に捕らえる中枢神経の一種であり、非侵襲的に直接観察することの出来る唯一の中枢神経です。学生時代より神経系に興味を持っていたことに加えて、当教室の網膜硝子体グループの精力的な臨床活動を研修医時代に目の当たりにし、特にWegener肉芽腫(文献1)という非常に難治性の疾患の患者様の主治医をすることを通して多くのことを学び、また現状の臨床の限界を知ったことをきっかけに、網膜硝子体の研究と臨床を選択することになりました。

臨床的には広く網膜硝子体疾患全般に取り組んできておりますが、研究面ではとりわけ加齢黄斑変性を中心に取り組んでまいりました。この疾患は欧米では社会的失明原因であり、近年本邦でもその発症が増加してきており、いくつかの治療法の開発が行われてきてはいますが根本的な療法がないことと原因が多因子にわたっており、有効な予防法も今のところ見つかっておりません。以前、われわれのグループからも経瞳孔温熱療法の治療成績を報告しましたが(文献2)、まだまだ治療法の開発には多くの障害があると思われます。

加齢黄斑変性の発症メカニズムには、動脈硬化の発症メカニズムと類似している点がいくつか見つかっており、マクロファージが脂質を貪食する際に関与するスカベンジャー受容体が加齢黄斑変性の病変部位で多く観察されることを報告しました(文献3)。また、動脈硬化と同様に網膜の酸化ストレスが加齢黄斑変性の発症に関与されるということが以前から推測されておりましたが、光障害による酸化脂質の増加と加齢黄斑変性の患者での酸化脂質の増加を発見し、初めて報告しました(文献4)。

近年、血管新生に重要な働きを持つVEGFに対する抗体などが加齢黄斑変性のみならずさまざまな網膜疾患に有効であることが報告されてきており、実際の臨床でも数多くの患者様に多大な利益を享受している現状ですが、眼内組織における各種サイトカインや成長因子の働きはいまだ未解明な点が多数あります。また、眼内組織は非常に微量であることや特殊な組成の液性組織であることから、サイトカインや成長因子の正確な働きを知る上で重要になってくる、それらの生体内での濃度が正確に測定することがなされていない状況でした。そこでわれわれは、患者様より提供していただいた眼内液を使用し、非常に正確で高感度な測定系を構築し報告しました(文献5)。

今後の展望としては、加齢黄斑変性のみならず難治性疾患である増殖硝子体網膜症や糖尿病網膜症のより有効な治療法の開発に取り組んでまいります。

  • 参考文献

    1.Kamei M, Yasuhara T, Tei M, Sano Y, Yoneda K, Kinoshita S: Vitreous hemorrhage from a ciliary granuloma associated with Wegener granulomatosis. Am J Ophthalmol: 132(6):924-926,2001.

    2.Tsujimoto J, Kamei M, Yasuhara T, Tei M, Ouchi M, Komori H, Yamada T, Yoneda T, Yoneda K, Kinoshita S. Low power transpupillary thermotherapy of choroidal neovascularization. Nippon Ganka Gakkai Zasshi 109(4): 218-224. April 2005

    3.Motohiro Kamei, Kazuhito Yoneda, Noriaki Kume, Mihoko Suzuki, Hiroyuki Itabe, Ken-ichi Matsuda, Takeshi Shimaoka, Manabu Minami, Shin Yonehara, Toru Kita, and Shigeru Kinoshita: Scabenger Receptors for Oxidized Lipoprotein in Age-related Macular Degeneration. Investigative Ophthalmology & Visual Science: 48(4): 1801-1807. April 2007

    4.Suzuki M, Kamei M, Itabe H, Yoneda K, Bando H, Kume N, Tano Y: Oxidized phospholipids in the macula increase with age and in eyes with age-related macular degeneration. Molecular Vision 23(13): 772-778. May 2007

    5.Yoneda K, Nakano M, Mori K, Kinoshita S, Tashiro K: Disease-related quantitation of TGF-beta3 in human aqueous humor. Growth Factor 25(3): 160-167. June 2007