京都府立医科大学 眼科学教室

今井 浩二郎先生

緑内障

今井 浩二郎の主たる研究成果と抱負

 慢性緑内障は視神経が徐々に障害されていく疾患であるが、その成因として、遺伝的要因、環境要因が関わっている。

 近年、落屑緑内障の発症にlysyl oxidase like-1 protein(LOXL1)遺伝子多型が関与しているとの報告が北欧からなされた。我々もその追試を行い、日本人においてもSNPの分布が北欧人種とは異なるものの、やはりLOXL1遺伝子多型が落屑緑内障発症に関わっていることを報告した。1)

 落屑緑内障は偽落屑物質の線維柱帯、虹彩や水晶体前嚢への沈着を特徴とし、眼圧が高度に上昇して点眼加療に抵抗性を示す難治緑内障の1つである。線維柱帯は前房側からシュレム管側に向かって、ぶどう膜網、強角膜網、傍シュレム管結合組織より構成され、房水はこの3層を経由してシュレム管に流入する。傍シュレム管結合組織は房水流出抵抗の主体をなす組織であり、この部位の房水流出抵抗が上昇することが眼圧上昇、ひいては緑内障の原因となる。

 落屑緑内障は前房内で形成された偽落屑物質が線維柱帯部位に沈着するために眼圧上昇を起こすと考えられている。偽落屑物質はマススペクトロメトリーにてfibrillin-1, fibulin-2, vitronectin, syndecan, versican, clusterin, lysyl oxidaseなどから構成されているとされるが、その産生ならびに蓄積過程の詳細はいまだ不明であり、現在この分野に注目して研究を進めている。

  • 参考文献

    1.Mori K, Imai K, Matsuda A, et al.: LOXL1 genetic polymorphisms are associated with exfoliation glaucoma in the Japanese population, Molecular vision 2008 14:1037-40