京都府立医科大学 眼科学教室

培養ヒト角膜内皮細胞注入療法

水疱性角膜症の再生医療

角膜の最内層を被覆する一層の角膜内皮細胞層は、角膜組織の含水率を一定に保ち、角膜の透明性を維持するために必須の細胞です。ヒトやサルなどの霊長類では、生体内では角膜内皮細胞が通常は増殖しないことが知られており、外傷や疾病、手術などの侵襲によって角膜内皮細胞が広汎に障害されると、角膜の透明性を維持することができなくなり、角膜に浮腫と混濁を生じます。このような状態を水疱性角膜症よび、患者さんのQOLを障害する難治性重症疾患であり、視機能低下をきたす主要原因疾患となっています。

・角膜機能不全の60%以上が水疱性角膜症である。
・患者数は日本では約1万人、欧米では20万人以上と推定されている。
・角膜内皮細胞密度が著明に低下し水疱性角膜症に陥ると、重篤な視機能低下を生じる。

 

現在、水疱性角膜症に対する唯一の治療法は、ドナー角膜を用いた角膜移植術であり、水疱性角膜症は角膜移植患者の60%以上を占めるとされています。近年はDescemet’s stripping (automated) endothelial keratoplasty (DSEK、DSAEK)などの角膜内皮パーツ移植が広く行われるようになり、角膜内皮細胞を含むデスメ膜のみを移植するDescemet’s membrane endothelial keratoplasty (DMEK)も確立されつつありますが、日本をはじめ多くの国や地域では、ドナー角膜の不足のために角膜移植を受けられない患者さんもいます。また角膜移植後に、ドナーの角膜内皮細胞が継続的に減少することが報告されており、特に周辺部の角膜内皮細胞も障害されている水疱性角膜症患者では角膜移植後の角膜内皮細胞密度減少が早く、長期予後が不良です。そのため、これらの問題点を解決するための新しい治療法の開発が強く望まれていました。

当院では、水疱性角膜症に対する新規治療法として、生体外で培養したヒト角膜内皮細胞を移植するという斬新で画期的な再生医学研究を行ってきました。京都府立医科大学眼科学教室と同志社大学の共同研究グループは、キャリアを用いないで培養角膜内皮細胞の懸濁液を前房内への移入により移植する技術の開発を行い、臨床研究を実施し、30例を越す患者さんで有効性、安全性ともに有望な結果が得られています。

これまで唯一の治療法がドナー角膜を用いた角膜移植であった水疱性角膜症に対して、培養ヒト角膜内皮細胞移植を確立することにより、角膜移植の多くの問題点を克服できる可能性が広がりました。
このことより、京都府立医科大学附属病院を中心として、平成29年5月から医師主導治験を実施することになりました。

 

水疱性角膜症患者さんを対象とした医師主導治験

医師主導治験の主な内容

  • 主な適格基準

    ・同意取得時の年齢が20歳以上90歳未満の方
    ・角膜厚が630 μm以上、かつ角膜上皮浮腫の存在する方
    ・最良矯正視力が0.5未満の方
    ・角膜内皮スペキュラーマイクロスコープで角膜内皮細胞が観察できないか、角膜内皮細胞密度が500個/mm2未満の方

  • 主な除外基準

    ・活動性の角膜感染症を有する方
    ・細胞移入後に3時間のうつむき姿勢が保持できない方

【治験参加の登録は終了しました】
たくさんのお問い合わせありがとうございました。

お問い合わせ

【治験調整事務局】 今井、岩見、
京都府立医科大学大学院医学研究科 医療フロンティア展開学

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