京都府立医科大学 眼科学教室

角膜

 我々の研究における基本理念は、難治性角膜疾患に対する新規治療を開発することであり、常にトランスレーショナルリサーチ、臨床研究を念頭に置いて研究を行っています。その中で、角膜は、京都府立医科大学眼科学教室が最も力を入れている領域の一つであり、特にOcular Surface(眼表面)についての我々の研究は、世界最先端のものであると自負しています。主たる研究テーマは以下の6つとなります。

1.角膜再生医学

 角膜再生医学を用いた新規治療方法の開発については眼表面疾患(ocular surface disorders)と角膜内皮疾患の二方向をターゲットにしています。眼表面疾患については培養角膜上皮幹細胞シート移植、培養口腔粘膜上皮シート移植の開発と改良を精力的に行っており、当然のことながら粘膜上皮幹細胞の生物学的特徴にも、口腔粘膜上皮幹細胞とp75局在との関係、Hes 1の意味することなどにも興味を持って研究しています。この研究は中村隆宏を中心として、先端医療振興財団 先端医療センターとの共同研究として、さらにJST(スイス-日本学術交流)などのサポートを受けて行っています。
角膜内皮細胞についてはヒト角膜内皮細胞培養法と移植法を開発しています。内皮細胞シートの作成、細胞注入法の開発、内皮増殖薬剤の開発などの研究は国際的レベルのものであり、小泉範子が中心となってJST(アジア医工連携)や滋賀医大動物生命科学センター(鳥居隆三教授)等のサポートを受けています。
臨床的には、培養粘膜上皮シート移植を難治性眼表面疾患に応用する臨床研究を行っており、外園千恵と稲富勉がその中心となっています。また、再生医学と臨床の境界ともいうべきDSAEKやDMEKと呼ばれる角膜内皮移植についても臨床に直結した研究開発を行っています。

2.Ocular Surfaceの自然免疫

 眼表面は粘膜上皮で被覆されており、眼アレルギー疾患の発症やその制御に大きく関係しており、一説では、炎症性腸疾患と同様な機序でStevens-Johnson症候群などの炎症性眼疾患が生じるとも考えられています。この分野は基礎研究から解明する必要があり、TLRsをはじめとする自然免疫系、プロスタノイドとその受容体系を上田真由美が中心となって研究しています。さらにStevens-Johnson症候群における自然免疫異常の関与について外園千恵、上田真由美が研究しています。

3.ドライアイに関する研究

 ドライアイについての研究は涙液に関わる生理学的研究が必要となります。涙液は水分のみならず油層が存在し、これらの量的、質的異常を客観的に評価する非侵襲的検査の開発が必須です。横井則彦はこの分野の国際的権威であり、多くのデータを収集し、そこから発展してさまざまな治療方法の開発に取り組んでいます。

4.角膜の分子細胞生物学、分子遺伝学

 この分野は、角膜上皮のさまざまな疾患を理解する上で必須のものであり、大阪大学細胞工学センターで修業をした川崎諭が重要な役割を果たしています。角膜上皮の強いバリアー機能維持の機序、ケラチン12特異発現の意味するもの、TGFBIやTACSTD2など角膜ジストロフィに関わる遺伝子群の生理学的意味、角膜透明性維持の謎を解く鍵になります。
  伴由利子のtight junction研究も特筆に値します。

5.角膜レドックス状態と移植免疫、角膜リンパ管新生

 山田潤が羽室淳爾特任教授の指導のもと、このユニークな研究テーマに取り組んでいます。特にマクロファージについて酸化型と還元型の役割が異なるため、移植免疫への関与を含めての研究です。また、丸山和一はリンパ管新生についてユニークな仮説を証明し、眼科領域から一般医学分野への応用を向けて羽ばたこうとしています。

6.臨床応用へ向けた開発

 アミノ酸点眼、植物系接着剤、強角膜コンタクトレンズなどの臨床研究を行っています。

7.培養自家口腔粘膜上皮シート移植術

 私たちは視覚(眼)を通して外界からの情報の大部分を得て日常生活を送っています。角膜(黒目)は、視覚をつかさどる重要な透明組織です。角膜が様々な原因で傷害されると、その透明性を失い著しい視力障害が生じます。従来からこのような濁った角膜に対してはアイバンクによる献眼からの角膜移植が行われていました。角膜移植の成功率は高く、これまでに多くの方が視力を取り戻してきました。しかしながら、日本国内では慢性的なドナー不足により、多くの患者さんが角膜移植を心待ちにしているのが現状です。また他人の角膜を移植する場合には拒絶反応を生ずる可能性があります。角膜再生医療は、不足している角膜を、最先端の培養技術、組織工学技術で再生させることを目指した、新しい治療法であり、自分の細胞をもとにした移植治療も可能となります。
 角膜上皮の幹細胞が障害されて生じますStevens-Johnson(スティーブンス・ジョンソン)症候群、眼類天疱瘡(がんるいてんぽうそう)、熱化学外傷では、角膜が濁るだけでなく、まぶたの癒着やドライアイを伴い、ドナー角膜による角膜移植では治すことが不可能でした。このため、これらの疾患は難治性角結膜疾患として、長年にわたり治療不可能とされてきました。
 当院では、このような難治性角結膜疾患を対象にして、長年にわたり角膜上皮再生医療に関する研究を行ってきました。その実績をもとに、平成26年1月からは先進医療として「培養自家口腔粘膜上皮シート移植術」の実施を開始します。

(文責:木下茂)

研究

  1. 横井 則彦の研究

  2. 外園 千恵の研究

  3. 稲富 勉の研究

  4. 川崎 諭の研究

  5. 丸山 和一の研究

  6. 小泉 範子の研究

  7. 中村 隆宏の研究

  8. 上田 真由美の研究

  9. 関山 英一の研究

  10. 奥村 直毅の研究